Global Athlete PROJECT

「Hero」

ストラスブールはすっかり冬になり、ストラスブールの名物でもあるクリスマスマーケットが始まって、街中はたくさんの観光客で賑わっている。

そんな中、ある朝衝撃的なニュースを読んだ。

「能活さんが現役を引退。」

読んでいる記事に目を疑った。

能活さんとは、本当に幸運なことに代表で一緒にプレーさせてもらった。

初めて能活さんを知ったのは、小学生の時だった。

今のNACK5スタジアム(当時は大宮サッカー場)が実家から近く、僕にとって高校サッカー選手権は身近なものだった。

ある日、歯医者の待合室で、受付の横にある部屋のドアの隙間から、選手権の準決勝、清水商業対鹿児島実業が映されていた。

能活さんが大活躍し、PK戦を制した清水商業が決勝に進む。

「こんなすごいキーパー見たことない!!」

その日から能活さんは僕のヒーローだった。

そんな能活さんと、日本代表で共にプレーさせてもらえる日がくるなんて夢にも思っていなかった。

代表で共にプレーさせてもらっていた時間は、いつも黙って能活さんの動きを見ていた。
一つ一つの動きへのこだわり、気持ちに影響されない冷静な判断、何よりゴールを守ることへの執着と大きな情熱。

そしてその勝負強さを目に焼き付けていた。

ピッチ外でも、食事の際には一切の妥協すら見せず、甘いものは絶対に口にしなかった。

楢さんとは名古屋で共にプレーさせてもらっていたけど、代表から帰ってくると、楢さんの表情はいつも引き締まったいた。

その裏にどんな存在がいたのか、代表で一緒にプレーさせてもらって改めて感じさせられた。

能活さんが現役を引退すると聞いて、お疲れ様でした、とは心から言えない。

まだまだその背中を見せ続けて欲しい。
その背中を追い続ける僕からすると、それが正直な意見だ。

川口能活という存在。サッカーに対する姿勢、そしてGKとしての情熱から多くを学ばせてもらったことに、心の底から本当に感謝している。そして、そのサッカーに対する一途さから、多くの感動と勇気をもらったことは僕だけではなく日本国民の誇りだと思う。

そして、それが今後の日本のサッカーにとって、日本GKにとっての未来にまた繋がっていくのだと確信している。

永嗣