「本物の中の本物」
名古屋グランパス時代。
GK練習の一部で彼の身体を抑えた時、その強く、分厚い背中に驚かされた。
僕が憧れ続ける、楢さんの背中。
謙虚で静かですべてを包み込んでくれる、その安心感が周りにもいつも伝わってくる。
GKとして受けた衝撃は今でも忘れられない。初めて一緒に練習させてもらった日、自分の自信はことごとく打ちのめされた。
すべてが正確で、一寸のズレも見せない。練習でのズレの無さは、試合でも同じだ。このシーンなら必ず止められる。
日本を背負って立つというのは並大抵の事ではない。
その背中から、話さなくたって多くを感じさせてもらい、そして多くを学ばさせてもらった。
何より、人としてどうあるべきか、その大きな器から学ぶべき事は今でも多い。
いつも考える。
楢さんだったらこう行動していたかな。
楢さんならどうしていたかな。
そう思う事ができるのも、楢崎正剛という偉大な人物と、人生の中で出逢う事ができたからだ。
共に練習し、プレーさせてもらった時間。
それ以上に共に過ごさせてもらった時間。
僕にとって大きな大きな財産だ。
今日、その背中をピッチの上で見れなくなると思うと、心の底から寂しくて仕方がない。
まだまだその大きな背中を追いかけていたい。それが今の正直な気持ちだ。
でも、楢さんの背中をピッチの上で見れなくなったとしても、僕はこれからもその大きく、そして力強いその背中を追いかけ続ける。
僕の心に鮮明に残された記憶と同じように、多くの人達にとって心の中に鮮明に残っていく。
それがまた日本サッカー、日本人GKの大きな基礎になっていく。
楢さん、これからもその背中を追いかけさせて下さい。
そして、楢さんも含めて、能活さん、佑二さん、満男さん、日本サッカー界に大きな功績を残してきた偉大な選手達が引退していく。
本物の中の本物。
子供達にはこういった選手を目指していってほしいと切に願っている。
永嗣